最初に押さえておきたいことがあります。医療事務という名前の国家資格は存在しません。
複数の民間団体がそれぞれ独自の試験を実施しており、名称も難易度もばらばらです。そのため「医療事務の資格を取りたい」と思ったとき、まずどれを選ぶかという問題に直面します。
そしてもう一つ重要なのは、資格がなくても医療事務として働けることです。受付やレセプト業務に法的な資格要件はありません。実際、無資格から採用されて現場で覚える人も少なくありません。
ではなぜ資格を取るのか。未経験者が「基礎知識がある」ことを示す手段として機能するからです。求人に応募が集まる職種のため、書類選考を通過する材料になります。
代表的なものを整理します。
| 診療報酬請求事務能力認定試験 | もっとも難度が高い。合格率30%前後。実務者の評価が高い |
|---|---|
| 医療事務管理士 | 歴史があり知名度も高い。在宅受験に対応する回もある |
| 医療秘書技能検定 | 事務に加えて秘書業務、医学知識も範囲に含む |
| 調剤事務管理士 | 調剤薬局向け。範囲が絞られ取り組みやすい |
迷ったときの考え方としては、就職を有利にしたいなら難度の高いもの、まず基礎を固めたいなら取り組みやすいものという選び方が現実的です。
医療事務の中核は、レセプト(診療報酬明細書)の作成です。
日本の医療費は、患者が窓口で払う分(通常3割)と、健康保険から支払われる分(通常7割)に分かれています。この7割を請求する書類がレセプトです。
レセプトは月に一度、まとめて審査支払機関へ提出します。記載に誤りがあると差し戻され、医療機関の収入に直接影響します。この「間違えられない」性質が、医療事務の専門性を支えています。
診療報酬は2年ごとに改定されるため、覚えたら終わりではありません。制度の変更を追い続ける必要がある点は、この仕事の特徴といえます。
医療機関は全国どこにでもあります。この点が、医療事務が長く支持されている大きな理由です。
一方で、給与水準は決して高くありません。求人によっては地域の最低賃金に近い水準のこともあります。安定性と柔軟性を重視する人には合うが、収入を大きく伸ばしたい人には向きにくい、というのが率直なところです。
医療事務系の資格のなかで、実務者からの評価が最も高いとされるのがこの試験です。
特徴は、診療報酬点数表を参照しながら解答する形式であることです。暗記ではなく、短時間で必要な情報を正確に調べる力が問われます。これは実際の業務そのものです。
合格率は30%前後で、他の医療事務系資格より明確に難しくなっています。学習時間の目安は200時間程度。すでに現場で働いている人が、スキルを証明するために受けることも多い試験です。
医療事務を目指すときの進め方として、いくつか提案します。
医療事務は、資格と実務が地続きになっている職種です。学んだ内容がそのまま日々の業務になり、業務経験が次の資格につながる。この循環があるため、未経験から段階的に専門性を高めやすい分野だと思います。