社会保険労務士とは?10科目の壁と「試験合格後」の話
社会保険労務士(社労士)は、労働基準法や雇用保険、年金、健康保険といった働く人に関する制度全般を扱う国家資格です。企業から依頼を受けて、労務管理の相談に乗ったり、社会保険の手続き書類を作成したりします。
似た響きの資格に行政書士がありますが、行政書士が扱うのは許認可や契約書など企業と行政・取引先の間の書類であるのに対し、社労士が扱うのは企業と従業員の間の制度です。守備範囲がはっきり分かれています。
社労士試験の科目は、労働基準法、労働安全衛生法、労災保険法、雇用保険法、労務管理その他の労働に関する一般常識、社会保険に関する一般常識、健康保険法、厚生年金保険法、国民年金法など、大小合わせて10科目にのぼります。
試験は選択式(8問・40点満点)と択一式(70点満点)の2つの形式で構成されており、法改正が頻繁に行われる分野のため、参考書や講座は常に最新の内容を使う必要があります。出題の約9割が法令の知識を問う内容です。
選択式・択一式のそれぞれで、総得点と科目ごとの基準点の両方をクリアしないと合格できません。1科目でも極端に点数が低いと、総合点が足りていても不合格になる仕組みです。
社労士試験の合格率は、近年6〜7%程度で推移しています。10科目という範囲の広さに加えて、科目ごとの基準点をすべて超える必要があることが、合格率の低さにつながっています。
合格基準点は、その年の問題の難易度によって毎年補正されます。「今年は易しかったから基準点が上がった」ということも普通に起こるため、ボーダーライン上の1点を削り出すような、地道な対策の積み重ねが必要な試験です。
社労士試験には、実は受験するための条件があります。大学卒業などの学歴、労働社会保険関係の実務経験3年以上、または他の国家試験合格のいずれかを満たす必要があり、宅建士のように「誰でも受けられる」試験ではありません。
さらに、試験に合格しただけでは社労士として働けません。労働社会保険諸法令の事務に2年以上従事するか、厚生労働大臣が指定する講習を修了したうえで、全国社会保険労務士会連合会の名簿に登録して、はじめて「社労士」を名乗れます。この点は、試験合格がそのまま資格になる資格とは仕組みが違うので、覚えておく価値があります。
合格者の約4割が女性というデータもあり、法律系の国家資格としては比較的バランスが取れています。年金や社会保険の知識は、仕事に使わなくても自分自身のライフプランを考えるうえでも役立つという声もよく聞かれます。